毎朝、丁寧に踏む。 一歩ずつでも、上手くなりたいから 感動の一杯のために。 谷 和幸
ABOUT
うどん馬鹿の、十六年。
十九歳、大学をやめた。理由はひとつ、うどんだった。
── 香川の高校生だった。
近所にうどん屋ができて、放課後だけのつもりで働きはじめた。
気づけば朝も店にいた。授業が終われば、また店にいた。
親のために受けた大学は、二年で単位を取り切った。それでも、腹の底が納得しない。
辞めて、修行に入った。十九歳のことだ。
── 三年後、師匠に言われた。「知らない土地で、やってみろ」。
二十二歳で、浜松の支店長。右も左もわからないまま、二年が過ぎた。
そこで出会った客のひと言が、東京行きを決めさせた。
── 二〇一〇年、人形町。
門前仲町でも、神楽坂でもなく、下町の真ん中を選んだ。
まだこの街が、いまほど注目される前のことだ。
二〇一六年、浜町に「谷や 和」。
二〇一七年、うどん学校をひらいた。教えることは、残すことだと思ったから。
── そして二〇二六年九月、八重洲。
変わらないのは、朝いちばんに生地を踏むこと。それだけだ。
THE CRAFT
毎朝、生地を踏み、
寝かせ、打つ。
いりこ・昆布・かつおで引く香り高い出汁。足踏みと熟成が生む、噛むほどに返すコシ。
Foot-kneaded, rested, and hand-cut fresh — every morning.